神対応できない日 秘められた歴史を求めて
いよいよ秋の深まりを感じる季節になった。
この時期に鹿の鳴き声が変わる。
「ピー」という鳴き声に加えて、長く嘶(いなな)くようになる。大抵3回鳴くがこれは異性を求めているらしい。
なんとも寂しく、悲しげで秋の空気と相まって胸に迫ってくる。
テレビの紀行番組で佐賀県にある神社が紹介されていた。
最近海外からも大勢の参拝者があるとのことで宮司さんが…
「神社だけに“神対応”したいですね」
お寺というのはいつ何時誰が来られるか分からないという緊張感がある。
遠くから気合を入れてお寺へ参拝したのにアニメ柄のTシャツを着たチャラい住職が出てきたらやっぱり嫌ですよね?
というわけで普段は黒か紺の無地のTシャツしか着ていないことが多い。
お盆の棚経の最終日にどうにか15分だけ休憩時間を捻出してお寺に戻ってきた。
連日の棚経で疲労困憊していたがとにかく15分の間に着替えて、シャワーを浴び、5分だけでも横になりたい…
と思って帰宅したのだが、玄関に…
白人の男性が立っていた(不吉な予感!)
「…アメリカ“テキサス州”カラ来マシタ仏像ヲ見セテクダサイ」
…1年で一番忙しくて一番疲れている日に…
お断りする訳にも行かないので仏像を安置してある建物に案内。
仏像の好きな方というのは1時間くらい拝観される方もある。
もし1時間も滞在されことになったら棚経の予定が大幅に狂ってしまう…
意外にというかこの男性は5分くらいの拝観で帰って行かれた。
お寺であっても“神対応”をめざしたいものである。
先週、福知山にある元伊勢の観光センターへでかけた。
大変熱心に観光ガイドをされている方があると伺って一度お話を聴いてみたくなったのである。
当地舞鶴の歴史は広がりをもってつながっており元伊勢や大江山の歴史とも浅からぬ関係にあると思っている。
1時間くらいお話を伺うつもりだったが…新発見、新解釈の連続で気がつけば
2時間半たっていた…
内容も大学の講義レベルのお話で本当に面白く、時間の経つのを忘れた。
久しぶりに頭を使って聴いた心地よい疲労感を感じながら帰途についた。
ぼんやりしすぎて元伊勢の内宮(ないく)を通り過ぎ、元伊勢の外宮(げく)にてお参りした。
若い宮司さんらしきご夫婦が一生懸命境内の整備をされていた。
【今回お話を伺った中にもあった内容だが、見事な五芒星の位置関係が元伊勢と伊勢、淡路の伊射奈岐神社、熊野本宮、伊吹山の間に結ばれているという。】
近くに豆乳のプリンを売っている綺麗なお店があり家族へのお土産に購入。
福地山というのは和洋のスイーツのお店が多くて時々は攻略したいエリアでもある。
福知山から帰宅すると密林に注文していた谷川健一「黒潮の民俗学」が届いていた。
日本海沿い特に但馬、丹後 海岸に香住(かすみ)、久美浜(くみはま)など<ミ>という言葉のつく地名があるという。
大江山の鬼退治については源頼光の鬼退治、麻呂子親王の鬼族退治、日子坐王(ヒコイマス)の討伐という3つの説話が存在している。
そのうち最も古いのが日子坐王(ヒコイマス)の討伐で、討伐されたのはクガミミノミカサである。
舞鶴の大浦半島にある三浜には日子坐王が祀られており、日子坐王がこの地にクガミミノミカサ追い詰めたという言い伝えもある。(「三浜」という地名に「ミ」という音が含まれているのは面白い。)
クガミミノミカサの根拠地は青葉山とも言い伝えられている
「ミ(ミミ)」は<耳>のことであるらしい。
古代には<耳族>とよぶべき集団が広く活動していたらしいのである。
「肥前風土記」には五島列島には「大耳」「垂耳」が住んでいて討伐されたとある。
古代史には様々な異族が征伐される逸話が見られる。
熊襲、隼人、土蜘蛛などがよく知られているが<耳族>もその異族のひとつであったようである。
一方で皇族にも名前に<耳>のつく人名が少なくない。
神武天皇の祖先や子孫の大半に<ミ(ミミ)>がつけられているという。
このあたりのことはいろいろ面白い歴史とつながっていて少し時間をかけて調べて見たいと思っている。